中高齢者に滅茶苦茶多い筋肉がつってしまう症状があります。
夜寝ている時や運動している時にふとつってしまう、靴下を履く時につってしまう、ひどい方は足の親指をふと曲げただけで足裏がつってしまいます。その対処として、芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)など漢方薬を服用されている方も少なくありません。
つってしまう部位としては、まずはふくらはぎ、足裏、足指が多いでしょう。そして腿裏(ハムストリング)、中には腹部を吊る方もご指導中にいました。
専門的には”筋痙攣”と言われるものです。不随的な筋収縮で多少の痛みを伴います。なぜつるのかその理由としては、よく以下の情報があります。
① 電解質ミネラルの不足、脱水
② 疲労
① に関して
例えば運動後の発汗によりミネラル(特にナトリウム、カルシウム、マグネシウムなど)が失われ筋収縮に必要な条件でない事が要因とされています。ミネラル不足の状態は、発汗を伴う就寝時やアルコールなどお酒の飲酒時にも同様な状態と言えます。
上記の主な理由は以下があります。思い当たる方もいると思います。
1つ目として、アルコールによる利尿作用、中高齢者の頻尿が上げられます。尿としてミネラルや水分自体が出ていってしまうためです。就寝前の入浴などで多量の発汗も考慮すべきでしょう。できるだけ自発的脱水を防ぐことが大切です。
2つ目の理由は、アルコールを分解する際には水が必要なためです。
アセトアルデヒドは体内で酢酸(お酢に含まれる酸味成分)に分解され、さらに二酸化炭素と水になり、尿や汗、呼気等になって排出されます。ということは、飲酒時のチェイサ―、飲酒後の水分補給は重要と言えます。
また3つ目として更年期の症状に見られるホットフラッシュ同様、エストロゲンの減少によって、血管の収縮や拡張をコントロールしている自律神経による体温調整が乱れる事も要因です。
② に関して
ここは専門家的に捉えてみましょう。筋肉疲労、神経性疲労共に要因としてあります。
なぜ疲労してしまうのかを考えてみると
●基本的に運動不足である
●運動パターンが少なく多様的な動きに慣れていない
(上手にまたは関節可動範囲全てを動かせない。その他に、足趾の機能低下は多くの方に見られる症状ですが、正しい動きをする時に安定性を増そうとすると、どうしても足関節や足趾のコントロールを増強しなければならない。そのような指導中に動かした途端に足がつるという事も多発していると言う点から、普段の生活には、そこまでリアリティのある身体活動をそもそもしていない事が予想できます)
●筋肉や関節の柔軟性に乏しい
●ふくらはぎの筋量が多く下肢の筋バランスが悪い
●偏りのある動作が多い
(例えば変形性膝関節症の方やO脚の方は下腿の内旋、膝関節の内旋を伴う屈曲などを行うと途端に足がつります。これはこのあるべき運動パターンで動いていないことが考えられます。痛まないようにして過ごしてきた代償と言えます。逆に言うとこの動作ができるようになる事は痛みの緩和につながると考えられます)
皆様の足を守る意味での靴自体も足趾本来の機能低下を手伝っている事実がありますし、道路も舗装された歩きやすい環境も然りです。足趾や足関節がヤバいと感じるようなリアリティのある砂利道、あぜ道、山道などは町中ではほとんどなくなってきています。そんな中での五本指ソックスなどは温故知新ですね。つまり結論は、コーディネーション豊かに身体を正しい全ての可動範囲を多様的に動かしていくことなのです。
最後に少し生理的に考えてみます。
筋肉と腱の各伸縮の調整担当が「筋紡錘」「ゴルジ腱器官」になります。この2つのセンサーの異常事態、感度不良があることで足がつることになります。「筋紡錘」の過剰反応で痛いほど縮んでしまう状態があり、また対になる「ゴルジ腱器官」の感度不足により筋収縮を抑える役割が機能しない状態なので筋収縮を誘発してしまいます。当方ではセンサー(感覚受容器)を意識したトレーニングやストレッチを考えて行います。
就寝時には布団が足上に乗り、足の底屈と足趾の屈曲を生じやすくつる引き金になりやすいとされています。漢方薬など含め投薬による効果は根本的治療にはならず、カフェインや交感神経刺激する物質を控えることが大切です。
図のようなストレッチやその反対のバランスの取れた筋トレなどが有効であると考えています。このストレッチにおいては、つま先をやや内側に向けると腓腹筋のこりやすい内側頭が、引き延ばされ効果的な動きとなります。その逆を行うと筋の伸張感が少なくなるのがわかるでしょう。膝関節も完全伸展で行うことがポイントです。強く行いすぎると伸張反射が働き、筋の興奮が収まらない事にもつながりますので、ゆったりと1-3分ほど持続できるようなテンションで正しくおこなうと良いです。
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